「ロックミシンってあったほうがいいの?」「まだ家庭用ミシンしか持ってないけど大丈夫?」
ハンドメイドを始めたばかりの方から、こんな相談をよく受けます。
私自身、洋裁学校で学びお直しの店で働いた後、6年間ハンドメイド作家として活動していますが、最初の数年はロックミシンなしで作品を制作していました。イベント販売やネットショップで商品を売る中で、試行錯誤しながら“布端の処理”に向き合ってきた経験があります。
この記事では、ロックミシンを導入するタイミングや代用できる縫い方をご紹介します。
ロックミシンってどんなミシン?どんなときに使うの?
ロックミシンとは、布端を「かがり縫い」してくれる専用ミシンです。刃がついていて、生地をカットしながら縫えるため、効率的に美しく布端を処理できるのが魅力です。
とくに以下のような場面で重宝します
- ニット生地やスウェットなど、ほつれやすく伸びる素材の縫製
- ウェア類などの強度や仕上がりにこだわる作品
- 商品数が増えてきて制作効率を上げたいとき
一方で、「小物メインで、ニットも扱わない」「月に数点作る程度」という方であれば、ロックミシンは“必須”ではありません。
ロックミシンはなくても大丈夫。でもあれば便利。
私がロックミシンを導入したのは、作家活動を始めて2年ほど経った頃です。それまでは、家庭用ミシンだけで作品を販売していました。しかも、販売したのはスタイやポーチ、布ナプキン、バッグなどの小物中心。きちんと布端処理をすれば、クレームもゼロでした。
ただ、委託販売先から「裏処理まできれいで感動しました」と言っていただけたとき、「手間をかければちゃんと伝わる」と確信したのを覚えています。
また、洋裁学校の先生は「ロックミシンを使わない方が高級仕上げ」と言っていらしたので、ロックミシンを使わない方法を習得しておくのも今後の役に立つと思います。
また、肌の弱い方や赤ちゃんはロックミシンでかゆくなったり、肌が荒れてしまうこともあるので、ロックミシンを使わないやり方を知っておくと便利です。
ロックミシンがなくてもできる!代用できる縫い方
では実際に、私がロックミシンを導入するまで活用していた「代用縫い」をご紹介します。どれも家庭用ミシンや手縫いでも実践できますよ。
① ジグザグ縫い(ジグザグミシン)
家庭用ミシンに必ずついている基本機能。布端のほつれ防止として最も手軽な方法です。
- 幅3〜4、縫い目の長さ1.5〜2.0で設定
- 生地端から1mm内側を狙って縫うと、美しく仕上がる
特にコットンやダブルガーゼ、オックス生地に有効で、小物には十分対応可能です。
美しさはロックミシンにはかないませんが、ほつれ止めとしてとして十分です。
② 三つ巻き縫い(細三つ折り)
生地の端を細く二重に折って直線縫いをする方法。スカーフやブラウスの裾に多く用いられる技術です。
- 薄手生地のハンカチや巾着袋に使います
- 折り幅を均一にするため、アイロンでしっかり折り目をつけてから縫うのがポイント
慣れないうちは難しく感じるかもしれませんが、仕上がりは非常に上品で“既製品感”が出ます。
③ 袋縫い
肌着や赤ちゃん用品など、布端を肌に当てたくないときに最適な縫い方です。
布端を完全に中に隠してしまうので、見た目にも優しく清潔感があります。
袋縫いの方法
- 布を外表にして縫う。この時、縫い代を1cmより細くする。

2.ひっくり返す。

3.1cm幅で縫う。先ほどの縫い代が全部入るように気を付ける。

4.完成。

縫い代が完全に包まれる形になる。



これだけで、どちらの面から見ても布端が見えない縫製に。
私もスタイや布マスクによく使っていました。
④折り伏せ縫い
「折り伏せ縫い」は、縫い代の布端を内側に包み込むように折り込んで縫う方法です。
布端がすべて隠れるため、見た目が美しく、ほつれにくく、丈夫な縫い方です。洋服の脇線やメンズシャツの袖、パンツの内股などにもよく使われます。
- 裏も表もすっきり仕上げたいとき
- 丈夫さが求められる部分
- ロックミシンを使わずに布端を処理したいとき
- 赤ちゃんの服
折り伏せ縫いの方法
1.布を中表にし、どちらか一方の縫い代を5mmにカットする。

2.長い方の縫い代で短い方の縫い代を包む。

3.完成。

⑤割り伏せ縫い
「割り伏せ縫い」も折り伏せ縫いと似ていますが、両方の側に倒すので、厚手の布に適しています。
見た目がきれいで、強度が高くなります。
割り伏せ縫いの方法
1.布を中表にして本縫いをする。この時縫い代は1.5以上あると後から縫いやすい。

2.縫い代を割る。

3.左右各々の縫い代を三つ折りにする。

4.三つ折りにした部分をミシンで縫う。

4.完成。

⑥端ミシン
端ミシンとは、布の端からごく近い位置(2~5mm程度)に直線縫いをかけることを指します。
- 布端のほつれ止め(ロックミシンの代用)
- 型崩れ防止(見返し・ポケット口など)
- 仮止め(表に出さず、本縫いの前に縫い代を安定させる)
ほつれにくい布に有効です。
端ミシンの方法
1.本縫い線を縫う。
2.縫いはしより2ミリ中をもう一度縫う。

⑦ バイアステープ処理
布端を市販のバイアステープでくるむ方法。縫い代を隠す+補強+デザイン性を兼ね備えています。
手作りのバイアステープを使えば、オリジナル感や世界観も演出できるので、ブランディングとしても効果大です。
私はイベント用の布小物で、リバティ柄のバイアスをよく使っていました。お客様から「細部まで可愛い!」と反応されることが多かったです。
バイヤステープ処理の方法
1.共布をバイヤスにカットし、3~4cm幅のテープを作る。
2.処理したい布端の表から縫い代を付けて縫う。
3.処理したい布端を包み、表から縫う。
この時、布の裏では縫い線の1ミリバイヤステープが出るようにする。
⑧ ピンキングはさみ+ステッチ
ピンキングはさみで裁ち目をギザギザにカットし、そのあと直線縫いで押さえる方法。
端がバイヤスになるのでほつれません。
バッグの裏地など、見えない部分に使えば作業時間の短縮になります。
ただし、洗濯頻度が高いものには向きませんので、使用箇所を選んでください。
ピンキング処理の方法
1.直線縫いをします。

2.縫い代をピンキングはさみでカット。

3.端がギザギザになります。ほつれにくい生地はこれだけで大丈夫です。

ロックミシン導入後の変化
ロックミシンを購入してからは、確かに作業スピードが上がりました。ニットも美しく処理でき、商品のバリエーションも広がりました。
ただ、こんなこともありました。
あるときイベントで「このバッグ、裏も丁寧にパイピングされてて素敵ですね」と褒めていただいたのですが、その作品にはあえてロックミシンを使わず、袋縫い+バイアスで仕上げていたのです。
「時間をかけても丁寧に仕上げること」の価値は、やっぱりお客様に伝わるんだなと再認識しました。
ロックミシンはいつ買えばいい?
今まで見てきたように、ロックミシンを使わなくても作品を作ることは可能ですが、以下のような場合にはロックミシンの購入を検討していってもいいかもしれません。
- ニット作品を本格的に作りたい
- 月に10点以上を制作・販売していて効率を上げたい
- 商品の裏処理もよりプロらしくしたい
- ミシン作業をもっと楽しみたい!
- いちいち端ミシンの設定をするのがめんどくさい。
ロックミシンの選び方
メーカーによって自動糸通しなどの機能があるので、ミシン屋さんで体験してみるといいです。
後はお財布との相談になると思います。
しかし、基本的にロックミシンには2本糸、3本糸、4本糸のものがあるので、その違いをご説明します。
2本糸
昔のロックミシンで、家庭用ミシンについているジグザグミシンに毛が生えたような仕上がりです。あまり美しいとは言えません。ほつれ止めとしては問題なく使えます。
メリットは糸が二本しかいらないことです。
3本糸
きれいなかがり目になります。本縫いはミシンでして、ロックだけするなら3本糸で十分です。
糸は3本いります。
4本糸
本縫い+ロックがこのミシン一つでできます。ニットを縫うときに伸びにくいので、ニットをよく扱う方にお勧めです。デメリットは糸を4本そろえないといけないので、いろんな色を揃えるのは金銭的にちょっと大変です。

ちなみに私はお直しのお店にいたので工業用のロックミシンを使っています。4本糸でも使えますが、普段は3本糸だけにして使っています。

3本糸で既製品のような仕上がりです。

糸を四本にすれば、マジックの線の所に本縫いも一度にできます。

ロックミシンがなくても始められる。大事なのは“丁寧な仕上げ”と“工夫”。
ハンドメイドは、道具がすべてではありません。
“今ある道具で工夫しながら楽しむ”ことが、技術の上達にもつながります。
ロックミシンは確かに便利。でも、家庭用ミシンだけでも丁寧に仕上げれば、お客様の信頼を得ることは十分可能です。
あなたのペースで、少しずつ技術と道具を揃えていけば大丈夫です。一歩ずつ、ハンドメイド作家としての夢を叶えて行ってくださいね。
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